うそつきな唇に、キス
「おい、置いて行くな。っつーか、えるに説明ぐらいしろ」
「それも含めてすべてお前の役目だろう」
「この暴君が……」
慌てて後ろから追いついてきた琴は、はあ、とため息をついたのち、わたしの横に並んで申し訳なさそうに眉を下げた。
「えっとな、あそこは厳密に言うとこの暴君の実家で、今回は車を置きに来ただけなんだよ」
「ああ、なるほど」
背後をちらりと流し見たら、ちょうど別の黒スーツを着た人が運転席に乗り込むところだった。たぶん、駐車場あたりに停めにいくんだと思う。
「で、今のこいつの家はあれ」
「え?」
あれ、と指差した琴の指先を辿って視線を投げると、到達場所は少し先にある洋館だった。それも、かなりメルヘンチックなお色をした。
「………………、」
「あ、似合わねーって素直に言っていいぞ。俺もそう言ったから」
「……いえ。色味が随分悪目立ちしそうなパステルイエローなのには驚きましたが、やっぱりちょっと大きいなって思ってました」
「ちゃんと指摘はするんだな……」