うそつきな唇に、キス
「ちなみにコレ生きてますよね?」
「いちおな」
「どうします?あの車では定員オーバーですけど」
「ここに放置する。あとで誰かに回収に来させればいいだろ」
「それまでに干からびないといいですけどね。……せっかくですし、ちょっと埋めます?砂風呂みたいに」
「お前変なところで鬼畜になるよな……」
好きにしろ、と。少し離れた場所で電話をかけ始めた琴から視線をそらして、ふと地面を見た。
誰かの鮮血に染まった砂が、足元に広がっている。
それを何の意図もなく、無感情に綺麗な砂をかけて隠した。
「………死臭、しないはずだけどな」
すん、と。鼻を鳴らしてみても、腐敗臭は香らない。
……勘か。はたまた、何かの見落としがあったか。
「……まあ、琴なら勘っぽいけど」
「おーい、える!話終わったからさっさと帰るぞ!」
「あ、はーい!」
わたしを呼ぶ声に、鮮血に染まった砂を蹴散らしながら、慌ててふたりのもとに駆けて行った。