うそつきな唇に、キス
ライアー / TTG





────たるんでいる。

最近、そんなことをよく思う。


琴から教えられた食器洗いを淡々とこなす中、ふと脳内にそれがかすめた。


お出かけとか、買い物とか、娯楽にかまけていられるような状況ではないはずなのに。



「……はあ、」



いつの間に、こんなにも気を緩めるようになったんだろう。


変なことを口走ったりしないよう、わたしの秘密に関わることを漏らさないよう、万全の注意を払わなければならないのに。

……でないと、わたしの願いを、叶えてもらえなくなる。



「……よし、お皿洗いはこれで終わり」



ふたりがいない時は、わたしがなぜか家事全般を担うようになっていて。琴から教わった通り、うまくできている、と思う。


ちなみに、この場にいないふたりは、なんらかしらの物見と視察、ついでに会合と本家に寄って帰るらしい。

あのふたり、実は意外と多忙な身みたいで、なんで学校なんかに通っているのか、疑問に思っているこの頃である。



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