うそつきな唇に、キス
呼吸は微弱。手足は若干痙攣し、意識も混濁している。
「若サマ、失礼します」
それとほぼ同時に、すん、と若サマの口に鼻を近づける、と。
かすかな、アーモンド臭が香った。
これって……、いや、でもアレはそんなに遅効性じゃないはず……。
「……って、考察はあとあと!」
若サマの体を慎重に仰向けにして、床に寝かせたのち、急いでリビングに必要なもの諸々を取りに行った。
毒の種類で、対処法は違ってくる。
断定できたわけではないけれど、たぶん、その手の類のものであることは間違いない。
だったら……。
頭の中でアタリをつけて、そのあたりにあったビニール袋、そして水が入ったペットボトルとティッシュを引ったくるように取ったのち、玄関へバタバタと戻った。