うそつきな唇に、キス





────ひどい顔だと、思った。


洗面所の鏡に映る自分は、あの時よりも、ずっと。

がらがらがら、とよくうがいをして、汚れた服も焼却処分できるよう、袋にまとめた。


……毒殺、みすい。

なんだろうな、アレは。


若サマの容態は、正直言ってよくわからない。

闇医者さんが来たあと、琴に、お前はサッサとうがいと服着替えて風呂入れ!と脱衣所に押し込まれてしまったから。


いちめいは、とりとめている、と、おもう。

そうであってほしい。……そうでなくちゃこまる。


一応、外に出ても可笑しくない服を選んで、若サマの部屋に入るためのドアの横で待つ。


勝手に入るのは、たぶんダメ。言われたことはないけど、そうなんだろうと思う。


だから、琴が出てくるのを、待っていなきゃ。

そう、長期戦覚悟でドアの横の壁にもたれて、うずくまっていたんだけど。



15分くらいしただろうか。

ふと、そのドアが開いた。



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