うそつきな唇に、キス



「あ、える。いたんだな」

「はい。あの、若サマは……」



聞かなくてもわかっていたけれど、聞かずにはいられなかった。


だってさっき、琴がドアを開けた時に、少し見えたから。若サマが。



「……ぎりぎり繋いでるって感じだな。何せ毒の特定がまだできない状態だ」

「やっぱり、青酸カリじゃなかったんですね」

「……なんでそう思った?」

「症状もそうですけど、若サマの呼気を嗅いだら、アーモンド臭がしたので青酸カリかなあって一瞬思ったんですけど、でもあれって数分後に効果が出始めるので、」



そう、何気なく言った瞬間。

隣にいた琴に、がばりと肩を掴まれた。それも、鬼の形相で。



「は?!嗅いだのか?!青酸カリは嗅ぐことで二次災害起こる可能性があるのに?!」

「……、あ、」

「あじゃねえよ、このバカ!!!この非常事態に患者を増やすな?!とりあえず一旦あの闇医者にえるも診てもら、」

「だ、大丈夫です!!特に目立つ症状はないですし、今は若サマ最優先でお願いします!」



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