うそつきな唇に、キス



身振り手振りで大丈夫なことを伝えると、琴に疑いの残った了解を示された。

ほんとに、渋々って感じだったけど。



「……あの、なんで特定が難航してるんですか?」

「青酸カリを経口摂取した時に見られない症状も出ていて、若が贔屓にしてる闇医者も困惑しててな。っつか、お前よく若が毒物を口から摂取したってわかったな。ちょっとでも対処遅れてたら危うかったってアイツ褒めてたぞ。珍しく」

「あ、それ褒めてるんですね……。……や、若サマならたぶんそうなんだろうなあ、と思いまして。死臭に慣れているとは言え、命を狙われてるならその辺りの訓練はしているはずですし、不必要な物は触ったりもしないでしょう?何より、わたしがいないところで、若サマ手袋つけてますよね?」

「……すごいな。なんでわかったんだ?」

「気付いたのは、……えっと、海に行った時、ですかね」



その時、一部分だけ日焼けしていない白い肌が、傷跡と同様にやけに目についたのを覚えている。



「手首から指先にかけて、不自然に日焼けしていなかったので。ああ、いつもは手袋してるんだろうなあって」

「……はあ、お前ほんっとよく見てるよな。そうだよ、いつも若は黒の手袋つけてる。お前の前ではなんでか外してるけどな」



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