うそつきな唇に、キス



「体調は大丈夫そうか?える、この家に入った瞬間熱出してぶっ倒れたんだけど、それは覚えてるよな?」

「あ、はい」



琴に返事をしながらむくり、と体を起こして気づいた。


────あれ。服が、違う。

わたしが着ていたのは水色のうっすい病衣のようなものだったのに、今は真っ白なネグリジェ、とでも言うべきものに変わっている。



「……あの」

「なんだ?あ、まず体温測って」

「服は、誰が着替えさせてくれたんですか?」



体温計を受け取ったと同時、素朴な疑問を投下すると、琴は体温計を差し出した姿勢のままぴたりと固まった。

まるで、電池が切れたロボットみたいに。



「……気になるか?」

「え、まあ、はい」

「どうしても、」

「─────琴吹だ」



琴の言葉に被せて回答を叩きつけてきたのは、いつの間にか入室していた若サマだった。



「っおいわ、」

「そうなんですね。どうもありがとうございました」



ぺこり、と座ったままお辞儀をすると、ふたりに変な顔で見下ろされた。鳩が豆鉄砲を食ったような顔で。



「……なんですか、その顔は」

「……えっと、もっと詰問されるかと思った」

「お前のアウトラインは、一体どこまでだ?」



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