うそつきな唇に、キス




精神的な疲れも自覚はないけれどあったのだろう。

でなければ、そんなに長い時間逆に寝ていられないから。



「える、食欲は?」

「えっと、あります」

「なら、なんか食いたいもんはあるか?作るけど」

「なんでもいいです」

「それが一番困るんだけど……」



眉を寄せてため息をついた琴は、じゃあ消化のいいもの作ってくると言って立ち上がった。



「あ、」

「まだ何かあんのか?」

「わたし、お風呂入った方がいいですよね?」

「……ああ、そういえばそうだな。それを先にやるか」



わたしの記憶が正しければ、ここに着いた直後にぶっ倒れてしまって、結局お風呂は入らずじまいだったはず。

汚い汚い言われてたから、入らないと。



「える、立てるか?」

「はい」



そうやって、いそいそと足を地につけた時。

今まで布団の下に隠れていた己の足が顕になって、初めて見えたもの。


それは────幾重にも巻かれた、痛々しい白の包帯。傷があった証拠だった。

よくよく見ると、手足や胸、首元もそれらで覆われている。



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