うそつきな唇に、キス



結局、抱き抱えられた状態のまま、脱衣所まで運んでもらった。



「ありがとうございました」

「……風呂のあと、話がある。なるべく手短に済ませろ」

「わかりました」



ぺこりとお辞儀をして、見上げた先。今までは顔に向かっていた視線が、ついさっき見つけたものへとついつい向いてしまう。


そして、若サマの方もなぜかわたしの瞳をじいっと見つめてきて、無口と無口の間にしずかな沈黙が落とされようとしていた時。

からり、と閉めていたドアが開いて、琴が顔を見せた。



「える、これお前の着替えな」

「ありがとうございます」

「で、これらがシャンプーやらソープの一式。ドライヤーとかタオルはこの棚に入ってるから好きに使っていい。あとは……」



その後、お風呂の使い方やらなんやらをまるっと丁寧に教えてもらった。いろいろ、察してもらった結果なのだと思う。

……でも。



「説明はこんくらいだが……える、お前ひとりで入れるか?なんなら俺が手伝うけど」

「え、」



さすがに、この一言にはびっくりした。



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