うそつきな唇に、キス



「……ただ、朝はよく揃って食べている。もし一緒に食べたいのならば、その時間に間に合うよう起きるといい」



そう言って、また食事を再開した若サマに、ぱちぱち瞬きをした、のち。

お腹の音が鳴りそうだったので、若サマの見様見真似で食べ始めることにした。




「……いただき、ます」



ただし、ひどく覚束ない手つきで。



「……える。わからないことがあれば、全て琴吹に聞け。教えを願いたいことも、全てだ」

「う、はい」



いろいろ見透かされている。

わたしに知識はあるけど、常識やら経験がないことを。


そう思いながら、ぱくり、とスプーンで口に運んで。……固まった。



「……っ、」

「ああ、える、食べ始めてたんだ、な……って、どうした。変な顔して」



< 33 / 219 >

この作品をシェア

pagetop