うそつきな唇に、キス
その一言でなんのことかわかったのか、わたしのそばまで歩いてきた琴は、パッと黒いシャツの袖をめくって見せた。
刻まれていたのは、左手首の、右側。わたしとシンボルは違うものの、モチーフがそっくりな黒の燕のタトゥーが彫られていた。加えて、翼はインフィニティマークのようなデザインになっている。
「このように、おれの関係者にはそれぞれタトゥーを彫らせている」
「……場所やシンボルの違いに意味はあるんですか?」
「あるにはあるが、それはまた後日話す」
「わかりました。……ちなみに、これってもう一生消えないタイプのやつですか?」
そろり、おそるおそる触れても、もう随分と前に施術をされたのか、痛みはない。
だけど、今までなかったものが突然姿を現して、落ち着かないのはどうしようもない事実だった。
「いや。それは二週間ほどしたら消える仕様のジャグアタトゥーだ。さすがにお前に了承もなく彫るわけにはいかなかったからな。応急的に施させてもらった」
「そうですか」