うそつきな唇に、キス
「もし残るのが嫌であれば、今後もその方法で二週間おきに施術を施させるが」
「……はい。それでお願いします」
さすがに、跡を残すのには抵抗がある。
……それに、わたしがここにいたという痕跡にもなってしまうものだから。
「まだ何かあるか?」
「……わたしの戸籍とかは、」
「お前が眠っている間に作り終えている。名前のことといい、素性は知られたくないのだろう?」
「知られたくないというか……、話せることが特に何もないだけで……」
でも、ありがたい。
加えて、眠っていた4日の間に諸々の手続きは済ませているらしい。
「……そうですか、わかりました。わたしの質問は、以上で大丈夫です」
「ならば、次の話に移る。明後日からだが、」
「はい」
かちゃかちゃ、キッチンに戻った琴により、食器がぶつかり合い、水が弾かれる音が響くリビングで。
「えるには────おれと琴吹が通っている高校に編入してもらう」
予想だにしない言葉が落とされて、思わず飲んでいたコーヒーを少しこぼしてしまった。