うそつきな唇に、キス
「そのご様子だと、編入手続きも終わらせていると思って大丈夫ですか?」
「ああ。お前が目覚め次第、編入日を確定させようと思っていた。……琴吹」
「ほんと、俺はお前の右腕であって、召使いじゃないんだがなあ……」
そう文句を垂れながらも、琴はがさごそと近くのチェストから何かを取り出して、わたしのもとへと持ってくる。
「これは……」
「凉乃高校の制服だ。これを着て、明後日からおれと琴吹と共に登校してもらう」
「……わかりました」
わたしの手元に与えられた服は、真新しく、わたしが今まで着ていた見窄らしい物でもなくて。
なんだか、また、胸がそわりと騒ついた気がした。
「……本日の話はこれにて以上だ。明日はゆっくり体を休め、明後日に備えろ」
「はい」
「……ああ。あとひとつ付け足しておくが、」
そう言って、立ち上がりかけた若サマは、ひどく冷たい瞳でわたしを見下ろした。
「おれと琴吹以外には気を許すな。
─────呑まれるぞ」