うそつきな唇に、キス





────真新しいタートルネックに、ブレザー、ベスト、タイツ。

初めて足を通すスカートは、胸元を彩るネクタイと同じ黒色をしていた。



「……ということで、彼女が本日付けでこちらに編入することになった子です」



名前の紹介などはなかった。この高校の特異性によるものだと思う。


20人強が敷き詰められた教室内で、若サマと琴のふたりはすぐに見つかった。

ふたりとも、中央の列の最後尾にいる。

左に琴、右に若サマという配置だ。ふたりとも、妙なオーラというか、貫禄からか、とても目立つ。


……そして、それ以上に目立っていたのが、わたしに突き刺さる好奇の視線。

好奇心やら、欲やら、疑心やら、侮蔑が垣間見える瞳が、一心に向けられている。



「では、座席の方は────、」



教師の方も、余計な話は一切せずに座席を指定しようと口を開いた直後。



「────える、ここに来い」



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