うそつきな唇に、キス
「……それで、行ったほうがいいですか?」
琴から若サマへと視線を滑らせると、スッと一度目を伏せた、のち。
「……行ってこい」
そんな一言を、薄い唇から解き放った。
「わかりました。食べ終えたら急いで向かいます」
「ちょ、ちょちょ、いいのかよ、若!?あいつら気性荒いことで有名だろ?最悪えるが怪我する、」
「える」
纏うオーラは別格。王者の風格とは、まさにこのこと。
我ながら、とんでもない人と接点を持ったものだと思う。
「まずは、格の違いを教えてこい」
そうはっきりと落とされた言葉は、なんの躊躇いもなく、ただ来る事実を述べたかのように淀みなく耳に馴染んだ。
「……若サマが、そうおっしゃるのなら」
それは当たり前の如き、信用という名の嘘をつく大義名分。
ただ、その大義分くらいは、若サマが望むような、都合のいいわたしでいようって、本気でそう思っていた。