うそつきな唇に、キス



「……え?」



断られるとは夢にも思っていなかったんだと思う。

わたしから平坦な拒否の言葉が出たと同時、三人の顔がぽかんと鳩が豆鉄砲を食ったような顔になったから。


けれど、一瞬ののちにはカッと顔を真っ赤にさせて、羽津さんにまた掴みかかられてしまった。



「あ、アンタ、何様のつもり?!」

「何様……?……えーっと、あなたがたのクラスの王様的存在である若頭サマの手下様のつもりですが……」

「そういうこと言ってんじゃないわよ!!この、調子にのる、」

「────調子に乗っているのは、一体どちらでしょう?」



想定していたよりも低い声が出て、己の声帯の扱いに不慣れなのがバレないか、ちょっとひやっとした。


が、そんなことよりも、わたしから冷え冷えとした声が出たことに驚いたのか、羽津さんはぴくりと肩を揺らして黙り込んでしまって。



「……わかりませんか?わたしは、あなた達よりもアルファが強く出ている(・・・・・・)、命令が効かなかった理由はそれだけです」



アルファ、オメガ、ベータ。

そんな第二の性が存在し、ヒエラルキーが確立される中で、同じ性同士の中でも序列が生まれる。


特に、アルファ内の競争はひどく激しい。

その理由としては、アルファという特性上、自尊心やら支配欲が強いためではないかと言われている。


そして、その内部競争を決定づけるのは、強制力、と呼ばれているアルファのみが使えるとされている一種の洗脳、みたいなチカラ。己より弱い力を持つアルファとベータに作用し、なぜかオメガには例外的に作用しないチカラで知られているらしい。



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