うそつきな唇に、キス
急いで鼻を片手で覆うと、どろりとしたものが手のひらに付着した。見なくともわかる。血だ。
「……やっぱり、かあ」
こうなることは十二分に予想できた。
だから、なるべくこんなことが起きないよう気をつけなきゃと思っていたのに。
やはり、気をつけてどうにかなることではないらしい。
「わたしが、同じじゃないから、だよなあ。たぶん」
だから、体に負荷がかかりやすくて、血が出やすく貧血を起こしやすい。
さて、これからどうしようか。
そんな風に、呑気に考えていた時。
「─────える!」
「………え、」
名前を呼ばれて、空をあおいだ。
わたしの、まさに頭上から文字通り落とされた声は、二階の窓から身を乗り出している琴のものだった。
その隣には、身を乗り出してはいないものの、窓に体重を預けている若サマのお姿もあって。
「……あの。わたしってそんなに信用ないですかー?」
つい、そう聞いてしまった。