うそつきな唇に、キス
「……燕のモチーフは、おれに帰属する者だと証明すると同時に、組織に属する者も意味する。だが、お前に彫ったそれは、おれの唯一に彫るものだ」
「……唯一?」
「おれが彫っている左耳の裏と遂になる場所、そしてモチーフを彫ることが許された唯一。つまり、おれの女である証ということだ」
なんてことないように吐かれた言葉。
それが一体どれほどの力を持っているのか、わからないほどわたしもバカではない、つもりだけど……。
「……え、あの、さっき、榊さんが、あの子、とも言っていたんですけど、え、恋人に連なる人、いますよね?」
「ああ」
「それってマズくないですか?」
当たり前のように頷かれたけど、いろいろとまずい気しかしない。
絶対に修羅場になる。
どんな理由かはわからないけれど、わたしを匿うためにそんな犠牲を払ってもらっては困るのだ。