うそつきな唇に、キス
のらりくらりとした受け答え。
会話量が多いからか、いろんなことを話していると思いがちだけれど、決して重要なことは口にしていない。
その事実だけで、こちら側にどれだけ染まりきっているのかがわかってしまう。
「ちゃうなら、なんデこないに綺麗な子侍らせとるん?従者でモない子を─────、」
その時、つ、とその人がわたしの右耳へと視線を移した。
「……えるちゃん、ちョいええか?」
「え、」
そう言われた時には、すでに髪がさらりと指輪がたくさんついた手に攫われていた。
そして、その瞳がわたしの鍵のタトゥーを捉えた瞬間、目が少しだけ大きくなり、口元にさっきよりも深い笑みが浮かんだ。
にやり、と言うよりは、にたり、と言ったほうがいいほど、不気味なもの。
「……フうん、へえ、」
「……あの、」
「若クん、もういたんやなかったっけな?こーユー子。僕の勘違いやっタ?」
「〝アレ〟は現状維持のための婚約者にすぎない。……それはお前も知っていたことだろう?」
「はハ。セやったなあ」