うそつきな唇に、キス



ぺこり、お辞儀を交えながらそう言うと、目の前の人はぱちぱち瞬きを繰り返した、のち。



「プっ、あははははは!!!さっすが若くんの唯一なだケのことはあるねんな」



唐突に、爆笑した。



「けどまさか、僕の言葉に逆らえるほど、アルファが強く出てるとは思ワへんかったわ」



ひいこらとお腹を抱えて笑っていたその人は、えらい子が入ってきたなあ、と感慨深げに言っていた。



「……おい」

「ン?」



ホッと胸を撫で下ろしていた時。

また首元を今度は後ろに引かれて、たたらを踏んだ。


わたしの首は引くものではないと抗議したかったけど、なにぶん襟元を引いたのが若サマだったから、言うに言えなかった。




「人のものに手を出す趣味は相変わらずのようで安心したが、それは人を選べと何度も言ったはずだ。……こいつはおれのものだということが、口に出さなければわからないか?」



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