うそつきな唇に、キス



さっきまで浮かべていたどの笑顔とも違う、どちらかというと表情が抜け落ちた顔。

喵さんの場合は、始終笑顔だったから、表情がなくなると一気に怖さが増す。




「……何を勘違いしているのか知らないが、こいつは編入してまだ1日目だぞ」

「……是吗(シーマー)?」



この時、初めて喵さんから中国語の言葉が出た。

たぶん、本当?みたいな意味だと思う。




「……あ、すんまへん、驚きすギて地元の言葉出てもうたわ。で、えルちゃん、今のほんまなん?」

「あ、それは、はい」

「ほんマなんか……。ほな、いつ若くんノになったん?」

「おれがこいつを拾ったのが、そもそも一週間ほど前だ」

「ほエええ」



またまた驚いた様子でわたしにずいっと近づいてくる喵さん。

ゔっ、わたし、いま初めて気づいたけど、近距離から見つめられるのが、少々苦手らしい。



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