うそつきな唇に、キス
「……えっと、えるちゃん、僕からもヒとつ質問ええか?」
「答えられる、範囲なら」
「その情報、一体どこデ手に入れたん?」
質問を投げかけられたと同時に、ようやく握られていた手が開放された。
どこ、どこ、どこ……?
その質問を数秒考えた、のち。
「……えっと、ごめんなさい。わからないです」
「え、それホんま?」
「はい。これに嘘はないです。教えられたことはちゃんと覚えてるんですけど、誰か、と言われるとちょっとわからなくて……」
あれは。喵さんの家のことを教えてくれていたのは、果たして誰だったか。
「そんジゃあ、名乗るまでもなく僕の名前も知ってたんちゃうん?」
「………、えっと、はい。実は」
「ええええ、ほんマかあ」
驚いたように目を見開いてはいるものの、口元にはほのかに微笑が浮かんでいる。
まるで、蟻の行列を初めて見つけた子供のような、そんな笑顔。