うそつきな唇に、キス



「……えっと、えるちゃん、僕からもヒとつ質問ええか?」

「答えられる、範囲なら」

「その情報、一体どこデ手に入れたん?」



質問を投げかけられたと同時に、ようやく握られていた手が開放された。


どこ、どこ、どこ……?

その質問を数秒考えた、のち。




「……えっと、ごめんなさい。わからないです」

「え、それホんま?」

「はい。これに嘘はないです。教えられたことはちゃんと覚えてるんですけど、誰か、と言われるとちょっとわからなくて……」



あれは。喵さんの家のことを教えてくれていたのは、果たして誰だったか。



「そんジゃあ、名乗るまでもなく僕の名前も知ってたんちゃうん?」

「………、えっと、はい。実は」

「ええええ、ほんマかあ」



驚いたように目を見開いてはいるものの、口元にはほのかに微笑が浮かんでいる。

まるで、蟻の行列を初めて見つけた子供のような、そんな笑顔。



< 72 / 220 >

この作品をシェア

pagetop