うそつきな唇に、キス
「こっちでは名前を無断で呼ぶことはマナー違反だって、昨日若サマに教えられたので、名乗られるまでは黙っていた方がいいかな、と」
「せやナ。僕以外には、家のことを聞くのもやメた方がええ。そんなン聞くほど無礼なことはないからなあ」
「礼儀知らずですみません……」
「僕言っタやろ。えるちゃんには何聞かれても怒らへんテ」
まるで大丈夫、とでも言うかのようにぐしゃぐしゃ〜っと頭を撫でられた。
「ソんで?そろそろ本題入らなアかんちゃう?」
「……そうだな。お前に、おれと琴吹が不在の間、こいつの面倒を見てもらいたい」
パシッと、わたしの頭の上に置かれていた喵さんの手を払い除けた若サマは、到底頼む側とは思えないほどの不遜な態度を続けている。
……が、それを微塵も気にした様子がない喵さんは、なるほドなあと相槌を打ったのち。
「ええで、えるちゃんの面倒は僕が見たル」
ふたつ返事で承諾してくれた。