うそつきな唇に、キス




なんとなく、ここまでの流れを作るために、わたしについての会話を続けさせたんだろうな、ということがわかった。

若サマは、そういう人だから。



「そのまマ僕にえるちゃんくれたら嬉しいんやけどなあ」

「何がどう転んでも、許諾しかねる」

「はは、言うと思ったワ」



自身の鎖骨まで伸びた髪をくるくる指に巻き付けて、喵さんはニッと明るい笑みをみせた。



「ふたりがおらん時は僕が守ったるから、安心セえよ、えるちゃん」

「えと、……おね、がいします?」



また軽く頭を下げた時、ふと思い出した。


─────おれと琴吹以外に、気を許すな。



「……呑まれる」

「なんか言ったかイな?」

「いえ。なんでもありません」



確かに、そうだ。

ちょっとでも気を抜いたら、この人に呑まれてしまいそう。


それほどの引力が、この人に働いている。


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