うそつきな唇に、キス
「……顔合わせは済ませた。あとはえる、お前次第だ。……行くぞ、琴吹」
「あ、える、ちゃんとスマホ持ってるよな?!」
「は、はい」
今朝渡されたスマホを手元で揺らすと、ホッと安堵したように息をついた琴が、すぐさま体の向きを変えて若サマを追っていく。
「何かあったらすぐ連絡しろよ!……おい若歩くのはえ、」
ぴしゃん。瞬く間に背を向かれ、呆気にとられている間に閉められたドア。
「……えっと、わたしの知り合いが忙しなくてすみません?」
「はは、えるちゃんはアイツらの保護者ミたいやな」
ほな僕らも移動教室やけ行コっか、と教室を出た時。
「あ、すみません、ちょっとお手洗いに行ってもいいですか?」
「ん、エえよ」
ふと目に止まったお手洗いに駆け込んだ。
─────そして。
「……ぅ、げほっ、っ、ゔ、」
血を、吐いた。