うそつきな唇に、キス



「……顔合わせは済ませた。あとはえる、お前次第だ。……行くぞ、琴吹」

「あ、える、ちゃんとスマホ持ってるよな?!」

「は、はい」



今朝渡されたスマホを手元で揺らすと、ホッと安堵したように息をついた琴が、すぐさま体の向きを変えて若サマを追っていく。



「何かあったらすぐ連絡しろよ!……おい若歩くのはえ、」



ぴしゃん。瞬く間に背を向かれ、呆気にとられている間に閉められたドア。



「……えっと、わたしの知り合いが忙しなくてすみません?」

「はは、えるちゃんはアイツらの保護者ミたいやな」



ほな僕らも移動教室やけ行コっか、と教室を出た時。



「あ、すみません、ちょっとお手洗いに行ってもいいですか?」

「ん、エえよ」



ふと目に止まったお手洗いに駆け込んだ。


─────そして。








「……ぅ、げほっ、っ、ゔ、」



血を、吐いた。



< 75 / 221 >

この作品をシェア

pagetop