うそつきな唇に、キス
「あの……喵さん。わたし、若サマが迎えを寄越してくれるから、大丈夫ですと言ったはずなんですが……」
「でモえるちゃん、迎えの車がどれかわかってなかったやろ?」
「ゔっ……」
そうなのだ。裏門に黒塗りの車ばかりが集合していて、どれがどれだかわからず。
そもそも、わたしが若サマと琴以外の内部の人間を知らないのも仇となり。
「というか、探す時間も与えてくれなかったのは喵さんじゃないですか……」
じとおっとした目で隣でだらけている喵さんを見やれば、なんのことやッたっけ?と、白々しい言葉を吐いた。
「きょろきょろ迎えの車を探してたわたしを背後から俵担ぎにして、ぽいっとこの車の中に放り込んだのは一体誰ですか」
「僕やネ」
素直なのか、そうじゃないのか。わかりにくい人だ。
今だって、ちょっと前までは随分とのらりくらりと流していたのに、急に事実を認め出したり。若サマと同じで、掴めなくて困る。