うそつきな唇に、キス
ꄗ
「……はあ、」
「えるめっちゃ疲れてんな。そんなに疲れるようなことあったか?」
「編入初日に喧嘩売られて鼻血出て、変な人に気に入られたあげく説教されて疲れない人がいますか……」
「…………、まあ、確かにな」
ぐてっ、とテーブルの上に突っ伏して、本日分の気力を使い果たしてしまったわたしは、ほとんど意地で意識を保っていた。
「……若サマ、わたし、あの人苦手です」
「おれもそうだ」
「若サマにも苦手なものってあるんですね……」
ブレザーやスカートに皺が寄るのも気にせず、テーブルの上で若干眠りこけていたら。
「おい、こんなとこで寝るなよ。っつーか夕飯食ってから寝ろ」
「………あれ、琴どこか行くんですか?」
テーブルに置かれた今日の夕飯とともに琴を見上げると、制服姿から黒スーツ姿に変わっていた。
わたしが帰ってきた時も、スーツ姿じゃなかったのに……。