うそつきな唇に、キス




「ああ。今から本家に行くことになってな。ちょっと出てくる」

「そうなんですか」



いただきます、と手を合わせてもぐもぐしながら、前方でわたしよりも随分お行儀良く食べ進めている若サマを見つめた。



「……なんだ」

「いえ」



なんとなく、ふたりは常に一緒だと思っていたから、別行動するのが新鮮で、つい。



「若サマは一緒に行かないんですか?」

「おれが家にいて何か問題が?」

「そういう意味で聞いたわけじゃないんですけど……」



なぜか、わたしの意図をねじ曲げて受け止られてしまう。

これも若サマの性というか、習慣なんだろうと思う。



「……言い忘れていたが、える。お前には明日少し外に出てもらうことになった」

「え?わたしが、ですか?」

「ああ。なにぶんおれには人手が足りないからな。優秀であろうお前の手を借りる」



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