うそつきな唇に、キス
若サマがわたしに頼み事なんて、珍しい。
それくらい、人手が足りないんだろうな。
「人手って、何人いるんですか?」
「ひとりだ」
「……………、……ん?」
信じられない、気のせいでなければならない言葉が、たぶん、聞こえた気がする。
「え、ひ、ひとりって言いました?」
「ああ」
「……まさか、琴ひとりだったり?」
「そうだが」
あ、そうなんだ……。
平然と落とされた言葉に、びっくりしすぎてほんのちょっと若サマと琴に慄いた。
「でも、今日わたしの迎え用に人員を割いてくれたんじゃ……」
「あれは本家の人間に押し付けただけだ。……おれが強制させたと言い換えてもいいが」
「ふ、不憫……」
迎えに来てくれた人が不憫でならない。
すみません、見つけてあげられなくて……。
「ええっと……ご事情はよくわかりませんが、理解しました。学校終わりでいいんですよね?」
「そうだ。琴吹を同伴させるかは、明日の能力テストの結果にて判断する」