うそつきな唇に、キス



髪はぼさぼさ。頬は若干こけているし、手足はこの人が少し強く掴めばボキッと折れてしまいそうなほど脆い。



「……手足が子鹿なみに細いな」

「いま一瞬折ろうとしませんでしたか?」

「折ればお前の世話が面倒くさくなるだけだろう」

「言い草がひどいです」



頭を縦横に揺らされながら、ふと自分が掴んだ彼の胸元を見た。

そこだけシワとシミが寄っていて、髪の毛は少ししっとりしている。



「……あの」

「なんだ」

「わたしは自分で拭けますので、どうぞご自分の体を拭いてください」



赤髪さんの口調から鑑みるに、まだ何枚かタオルがあることはほぼ確定だ。

わたしが濡らしてしまった、というのを気にしていないと言えば嘘になるかもしれないけれど、それを差し置いても、いまこの人にダウンされるのは避けたかった。



「そうですよ。見た目にそぐわず若は体が弱いんですから」

「琴吹、お前は黙って運転していろ」



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