うそつきな唇に、キス
「……わかった。琴吹」
「あー、はいはいわかってるって!帰ったら用意しとく!!」
冷蔵庫から取り出した栄養食品のようなものを口に咥えて、黒の背広に袖を通す琴は、すごく忙しそう。
右腕というか、若サマの唯一のコマだからいろいろ大変なんだろう。
「……あの、若サマ」
「どうした」
「主犯がわかれば、そいつを引っ捕らえてもいいですか?」
そう言うと、若サマ含め、なぜか慌てて準備していた琴さえもぴたりと一瞬硬直した。
「……それはその場の判断に任せる」
「わかりました」
「……えるお前、なんかすげえ気合い入ってね?」
「指示されたことは完璧にこなさなきゃいけない定めを持っているので」
「有能さが裏目に出てる……」
なぜだか琴に憐れみがこもったような目を向けられたのち、琴はじゃあいってくると言って忙しなく出て行ってしまった。