うそつきな唇に、キス
「……それにしても、若サマがわたしに頼むなんて本当に珍しいこともあるんですね。てっきり若サマは、わたしにそういう類のことについて干渉させたくないものだと思ってました」
「……背に腹は変えられないからな。それに、本家からお前のことについて突かれていたから、都合がよかった」
「本家から?」
きょとり、と首を傾げると、若サマが緩慢に頷いた。
周知の事実かと思っていたけれど、どうやら違うらしい。
「お前は本家の了承ナシにこちらに引き込んだからな。加えて、どこからかお前のタトゥーのことが漏れていたため、それについてもどういうことだと突かれている」
「勝手気ままにした弊害が……」
「よって、今回お前の有能さを知らしめることにより、その声を一蹴できると踏んだだけだ」
「なるほど」
若サマらしい、無理矢理というか横暴というか、それでもいちばんこの界隈の人には通じやすい実力主義な方法だと思う。