うそつきな唇に、キス



「ならわたしにも張り切らない理由はどこにもないですね」



ごちそうさまでした、と手を合わせてスプーンを置く。


そして、いまだ食べ続けている若サマへと視線を向けて。



「これ、洗った方がいいですか?」

「置いておけばいい。琴吹が洗うだろう」

「琴があとから文句言ってきそうですけど……」



残念ながら、わたしも食器洗いはしたことがないから、お皿をぱりんぱりん割ってしまうかもしれないからできない。


……今度、琴に教えてもらおうかな。

そうしたら、わたしもできると思うから。




「若サマ、先にお風呂いただいてもいいですか?」

「……毎度聞く必要はない」

「わかりました。じゃあ、お先に入らせてもらいますね」



食器をシンクに置いたあと、若サマにぺこりとお辞儀をして、てっててこ脱衣所へと直行する。




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