うそつきな唇に、キス
「……はあ」
脱衣所に入り、ぱたん、と扉を閉めたあと、がさごそ自分の袖口を探った。
確かこのあたりに……。
「…………睿霸も、危ない真似するなあ」
ふわ、と指先に柔らかい感触が伝わってきたと同時、音さえ出ずに袖口から出てきたのは、四つ折りにされた小さなティッシュの紙。
「……まあ、何もなければ自主的に行くことはないだろうけど」
そこに記された文面に独り言を落として、制服のまま浴場へと入る。
「おつかいと能力テスト、か……」
ちゃぽん、とお湯の温度を確認したのち、がこ、と排水溝に繋がる蓋を開けて、ティッシュを水に濡らしごしごし手揉み洗いをする。
すると、洗濯機に入れた時のように小さな紙クズとなってティッシュだった残骸が流れていく。これでは、記されていた文字を読むこともできないだろう。
「……さて。どこまで攻めようかな」