うそつきな唇に、キス
「ちょ、ほんま、マジで待ッてくれへん……?僕でさえ、若くんと並んだことはあれども勝ったことないっちゅーノに……」
「俺もメンタル死にそ……」
琴と睿霸がふたり揃って頭を抱える意味がわからなくて、隣でその様子を見ていた若サマと一緒に首を傾げる。
「今の状態で負けていても問題はないのでは?外聞的には多少あるでしょうけど……、それでも、琴も50m走ではわたしより速いですし」
「ほんのコンマ1秒差だぞ……。それで勝っても何も嬉しくねえわ」
「そういうものですか」
「……逆に、若くんに勝ってんのに喜んでないえるちゃんが僕にはわかラんよ」
魂が丸ごと抜かれたように、意気消沈しきっている彼らから、隣にいる若サマへと視線を移して。
その先にいる若サマは、至って平常通りの無表情を貫いている。
「そりゃ、わたしも勝ったこと自体は嬉しいですけど……でも、今の状態で数多くの種目では負けてしまっているので、喜ぶに喜べないというか……」
「まず、若の背中にぴったり張り付けてる時点ですごいと思うんだがなあ……。それも、男子ではなく女子が」