綾織り
「いやー、よく決心してくれたよ。」

仲介役の男が、ニヤニヤと笑っている。

「お前が子供の頃から、こいつは高く売れると思ってたんだよ。」

幼い頃から、仲介役の男は私に親切だった。

まさか、そんな事を思っていたなんて。

「紫野さんも綺麗な人だけど、お前さんも磨けば綺麗になるよ。」

「そうかな。」

「ああ、俺が保証してやる。」

「ありがと。」

こうなったら、料金の高い女郎になって、花魁ってヤツになってやろうじゃないの!

私は、青い空を見上げた。


その時だった。

「きゃあああ!」

後ろから、悲鳴が聞こえた。

振り向くと、近所の人が私の家を覗いていた。

「紫野さん!しっかりして!」

私は、目を大きく開けた。

仲介役の男と目を合わせると、急いで家に戻った。

「あっ!沙織ちゃん!」

隣のおばさんが、私を止めた時だった。

私の目に、母の身体から大量に流れる血の海が映った。

「えっ……」

よく見ると、母の身体に刀が刺さっている。
< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop