綾織り
「いやあああ!」

私は、おばさんを突き飛ばして、母の元に駆け寄った。

「母上!母上!」

身体を揺らしても、反応がない。

真っ白な、血の気が失せた顔。

「目を開けて!死なないで!母上!」

目からボロボロと、涙が零れ落ちた。

誰かが呼んだのか、お医者様が家の中に入って来た。

「紫野さん!」

お医者様は、母の喉元に手を当てた。

そして、首を横に振った。

「ああああ!」

母は、死んでしまったのだとその時に知った。


「どうして?」

「娘が女郎になるなんて、許せなかったんだろう。」

また近所の人が、陰口を言う。

そんな!

私が女郎になると言った時は、愚痴はこぼしたけれど、反対はしなかったのに!

どうして!母上!

許せないのなら、叩くなりして強く反対して欲しかった。

まさか、母上が自殺するだなんて!
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