君にホワイトブーケを贈ろうか



スカートの裾をぎゅっと握ったのが見えた。


勇気を出すことや気持ちを伝えることの難しさはわかっているつもりだ。

常に相手が傷つかない言い方を選んではいる、つもりだ。あくまでつもりだ。



「ごめんね、俺、彼女がいるから」



───彼女がいる。どうしようもなく愛おしくて夢中になっている彼女が、いるんだ。


誰より可愛くて、好きでどうしようもない彼女はこの空間に、この教室内にいる。

振り返りたい、今何をしているだろうか。さっきまでは誰かの卒アルにメッセージを書いていたけど、今もしかしたら俺がこの子と話している様子を見ているだろうか。



「……知ってます、それでもいいので……」

「俺が嫌なの、ごめんね」



ボタンは全てしっかり残っている制服。もし俺が誰も断らなければとっくの昔にボタンは売り切れだ。


目の前にいた女の子は「そうですよね、無茶言ってごめんなさい」と踵を返した。
顔を背けた直前、目に涙が見えた気がしていたけど、それは俺の知った話じゃない。


ボタンは全て死守。俺があげたい子は1人だけ。

……欲しがってもらえるかはわからないけど。ボタンにこだわりや執着はなさそうだ、俺の彼女は。


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