届け、この片思い
私から稔先輩へと視線が移ったとき、何かを察したように口にした。

「……え?」

「まじ?月菜、借りてきな!」

戸惑いが隠せない中、よく言ったと言わんばかりに稔先輩の背中をバシバシ叩く尚くん。

「はい。汚しても大丈夫だからね」

言われるがまま、されるがままに稔先輩のジャージを手渡され、じゃあ、と2人は教室に入っていった。

ありがとうって言いそびれた。

また、お昼休みにでも言いに来よう。

私は借りたジャージを大事に抱きしめながら更衣室へと走った。



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