届け、この片思い
まるでわくわくが止まりません、とでも言いたげな声だ。

「違うよ!尚くんのジャージ借りれなくて、仕方なくだよ」

「そこ!喋らない!」

私の声が聞こえてしまったのか、先生に注意されてこの話題は幕を閉じた。

私だけじゃない。

こんなに簡単に、好きでもないような女の子にジャージを貸すんだから、きっと稔先輩は誰にでも何でも貸しているんだろう。

あの優しさは、みんなのものだ。
ジャージからふわっと香る嗅ぎなれない柔軟剤の匂いに包まれながらする体育は、少し苦しかった。



< 12 / 28 >

この作品をシェア

pagetop