天使がくれた10日間
真っ白
俺の姿を見て、
ペコリ、と頭を下げる彼女。
ふわっと、
栗色の髪が揺れる。
ここ、病院だよな。
ってことは、
この子すっぴん?
…なのに、
何だこのかわいさ。
「坂下くん?」
トリップしていた俺を呼び戻す、婦長の声。
「は、はい!」
「どうかした?」
「いや、ちょっと頭がフラフラして…」
「まぁ、ムリもないわよね。こんなかわいい子の前じゃ」
女の子は、
そんな婦長の言葉にも動じずにボーっと窓の外を見ている。
「とりあえず座って」
「あ、はい」
婦長にすすめられて、パイプ椅子に腰掛ける俺。
ただし、視線は女の子に向けたまま。
目が離したくても、離せないんだ。
「坂下くん、この子に心当たりは?」
「あるわけないじゃないですか!」
「やっぱり、そうよね…」
婦長は、ふぅ、と短いため息をついた。
「実はね、」
「…はぁ」
「この子、記憶がとんじゃってるみたいなのよ」