天使がくれた10日間
ぽつんと
リビングに残された彼女と
頭が真っ白な俺。
恐る恐る後ろを振り向くと、無垢な顔をした彼女と目が合った。
「‥おまえ‥じゃなくて、君、名前はなんていうの?」
「‥‥‥」
「年とか、住んでたところとか全然思い浮かばない?」
「‥‥‥」
だめだ、こりゃ。
俺はあきらめて、深いため息をついた。
「疲れたし、もう寝よっか。母さんの部屋に布団しいてくるよ」
布団を探しに、俺が和室に向かおうとすると‥
「‥‥‥ミヅキ」
彼女の口が、
小さく動いた。
「名前は‥ミヅキ。それしかわからない」
彼女―――ミヅキは、俺と目を合わせないままそうつぶやいた。
‥なんだ、
喋れるんじゃん。
変な安堵感を胸に抱いて、
「俺、坂下透也。透也でいいから」
俺はできるだけ優しい言い方で彼女に伝えた。
「トーヤ?」
「うん、そう」
「‥迷惑かけちゃってごめんなさい」
しゅんとした顔でうつむくミヅキ。
‥くそ、
そんな顔すんなよ。
可愛すぎなんだよ、おまえ。