天使がくれた10日間



眠たそうに目をこすりながら、みづきは座ったまま俺を見上げる。





その顔が、あまりに無防備であどけなくて。



‥やべぇ。

これ以上2人きりでいたら俺、母さんとの約束守る自信ねぇよ。





とっさに彼女から目を離して、



「俺、学校行くから。朝飯リビングに置いとく。腹経ったら家ん中あさってなんか適当に食っていいよ。風呂とかトイレとか、好きなように使っていいから」



用件だけ伝えると、俺はさっさと家を出た。











「‥おまえ、その頭と目の下のクマどうした?」



イライラしながら授業を受ける俺に、拓が聞いてきた。



拓の席は俺のすぐ後ろで、端っこの席の俺たちはしょっちゅう授業中にお喋りを繰り広げている。



「‥おもしれぇよ?俺の昨日1日は」


「おもしろいって、どんな?」


「空から天使みたいにカワイイ女の子が降ってきて、記憶喪失のその子がうちに一緒に住むことになった」



‥なんか自分で言っててアホらしいな。



「‥おまえ、それほんとならラッキーじゃん」


「は?手出し一切禁止だぜ?生き地獄だよ」



自分のタイプどストライクの女が壁一枚隔てた場所で無防備に寝てんのに、触ることすらできやしない。



性春まっさかりの男子高校生には辛すぎるに決まってる。



‥って言っても、

母さんの「手出し禁止」がなくたって、

俺はきっとみづきに手は出せない。





なんとなく、

そんな気がした。



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