【短編】君にあげるチョコ
「ありがと〜」



友達にはあげるし、なんならクラスの男子全員分ある。

クッキーは量産できるから楽だしね。

全員に配ると、暁からの視線をビシバシ感じる。

本当は朝あげたかったんだよ。でも、恥ずかしくなっちゃって……。

大きな紙袋持ってるの、気づいたけどわたしが何も出さないから今日は何の日か聞いたんだよね。

暁の優しさはありがたいけど、わたしには恥ずかしくて無理だった。

何も見てない、わたしは何も見てない。何も聞こえない……。



────────────
────────
────
──



授業が終わり、帰ろうとすると。



「凪咲、一緒に帰ろ」

「いいけど?」



なに、いいけどって!

かわいくない返事しちゃった……。

もー、何やってんだろ。わたし。



「俺掃除あるから、ちょっとだけ待ってて?」

「ん」



暁が掃除してる間、しっかり頭の中でシュミレーション。

今度こそ、渡さないと。

帰りに渡せなかったら、もう渡せないんだから。チキンなのはわかってるけど、頑張れ、わたし!

シュミレーションではばっちりだけど、不安になってきた……。



< 2 / 6 >

この作品をシェア

pagetop