恋の仕方、忘れました
お姉ちゃんとイノケン事件から二週間。
お陰様で順調……と、言いたいところだけれど、順調というかなんと言うか、はっきり言うと付き合う前と何も変わらない生活を送っていた。
この歳まで拗らせていただけあって私の脳は学生時代と変わっていないようで、もっとこう、彼氏が出来ると毎日のように会ってイチャイチャするものだと思っていたけれど、それが全くない。
有難いことに職場が同じだから毎日顔は合わせるのだけれど、それだけだ。
ちなみに私達の関係は会社の人間に口外していない。
特にふたりで話し合って決めた訳では無いけれど、お互い黙っていた方が良いと分かっているから。
だって周りから囃し立てるられるのも嫌だし、主任ファンの社員やお局の目も怖いしで、秘密にしている方が安全に決まってる。
私と付き合ってるってバレて茶化されるのは主任だと思うし。
だけど、そのせいか付き合った今でも主任は私に対して会社では寡黙で無愛想だった。
分かっていたけど、たまには笑顔が見たい。
だからといって、ふたりきりで会う時間もなかった、
主任は仕事が忙しいようで、残業は勿論のこと休日まで出社していたりする。
課長を恨みつつ、主任の身体のことを思うと会いたいなんて言えなくて。
だから付き合ってから二週間、特にふたりで会うこともなく、職場で会うと挨拶を交わすだけで終わっていた。
何度も夜に電話をかけようとしたけれど、疲れてる主任を余計疲れさせてしまわないかと不安になって結局出来ずにいるし、負担になって振られる方が怖かった。
主任からも連絡はないし、きっと寂しいと思ってるのは私だけ。
主任は大人だ。きっと大人ってこういう付き合いが普通なんだと思う。
私は世間の恋愛を全く知らないから、私の価値観を彼に押し付けることなんて出来なかった。
彼氏が出来ても悩みは尽きない。
寧ろこの関係を続けることの方が難しい気がする。
やっぱり恋って難しい。