恋の仕方、忘れました

「……主任の、負担にはなりたくなくて」

「俺がいつ負担になるって言った」

「言ってない、です……独断です」

「……お前はすぐそうやってダメな方に走る」



呆れたような声でそう言うと、主任は私の服から手を引っこ抜き、身体をそっと離した。

さっきまで熱を帯びていた身体が、あっという間に冷えていく気がする。


どうしよう、怒らせたかも。


不安になり、恐る恐る視線を上げると、主任は私から視線を逸らして自分の髪をくしゃりと触った。



「俺ら何のために付き合ってんの」

「……何の、ため?」

「言いたいことも言えないようだったら、一緒に意味ないだろ」

「……」



確かにそうかもしれない。
だけど、好きだからこそ困らせたくないと思うことは、間違いなのだろうか。

やっぱり主任のような大人な人に、私は釣り合わないのかもしれない。


これを言ったら怒られるから言えないけど、私は主任の横にいる限り、ずっとこの不安を抱えるんじゃないかと思う。



「……いや、違うな」

「え?」



もしかして、やっぱり別れる?って言われるかと思った。

けれど主任は、小さくそう零すと、私の椅子に腰掛ける。


今度は私が見下ろす形になって、きょとんとして主任を見据えると、彼は眉尻を下げながら私と視線を重ねた。



「成海、ちょっとおいで」

「え、」

「ここ、早く」



そう言って自分の脚元を指さしたあと、私の方へ手を差し出した。
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