恋の仕方、忘れました
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「成海、また新規の契約とったんだって?今月もまた女性社員でぶっちぎりのトップだよ」
「ありがとうございます」
目尻をいやらしく垂らした課長に軽く頭を下げて、踵を返しデスクに戻る。
休む暇もなくパソコンの画面に視線を向けて、マウスに手が触れた───瞬間だった。
「成海さん、ヤバくない?」
私の耳に届いたのは、コソコソと話すお局達の声。
「絶対枕してんでしょ」
「無駄に色気だけあるしねぇ」
コソコソといっても、恐らくわざと私に聞こるように話していて。
けれど私は、いつものように聞こえていないフリをしながらキーボードを叩いた。
無駄にってなんだよ無駄にって。
そりゃアンタ達よりは色気がある自信ありますけど?
ていうか、アラサー独身女が自分のためにお金つかって綺麗にしてて何が悪いんだよ。
人の悪口言ってないで、まずそのひん曲がった性格磨き直してこいよオバサン。
と、心の中で悪態をつきながら小さく溜息を漏らす。
まぁ、こういうのはもう慣れてるんだけど。