恋をしたのはお坊様
出合い
ブルッ。
「サムッ」

悪寒がして、全身が震えた。
3月だからといって油断したつもりは全くないし、ちゃんと温かい格好で防寒はしてきた。
しかし、それは街中を歩くことを前提にしたもので、まさか山中で雪に降られて道に迷うなんて・・・
そうだ、助けを呼ぼう。
鞄の中をごそごそと漁り、スマホを取り出してみた。けれど、
「ええー」
まさかの電池切れ。
もー、こんな時に限って・・・
ブルブル。
動いたからだろうか、さらに震えがひどくなってきた。

「何で突然雪が降るのよっ」

自然現象に怒っても仕方がないけれど、今日は朝から晴れていた。
確かに気温は低かったけれど、雪はなかった。
だからこそ久しぶりに訪れた街並みが懐かしくて、つい散策をしてしまっただけ。

ガタガタガタ。
とうとう奥歯が鳴り始めた。

これは困った。
このままじゃ死ぬかもしれない。
もしそうなったらみんなどう思うのだろうか。
きっと、山に入って自殺したと思うのよね。
最近の私は周囲からそう思われてもおかしくないくらい病んでいたから。

止まらない震えと寒さにじっと体を硬くしていると、寒いという感覚は痛覚に代わっていく。頬も手も、頭も足も、そのうちに体全体が痛くて、息も苦しいから叫ぶこともできない。気が付いたら私は目を閉じていた。
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