恋をしたのはお坊様
「今まで仲良くしてくださってありがとう。どうやら付き合っていた彼との別れ話でもめて逆恨みされたみたいなのよ」

後日、すっかり弱ってしまった本人に代わり会社に置いていた私物の整理に来たお母さんが、私にだけ教えてくれた。
確かにあの写真は誰にでも撮れるものではない。やはり痴情のもつれってことか。

「話を聞いて私も頭に来たけれど、あの子が相手のことを一切言わないからもう聞くのはやめたの。これ以上あの子を追い詰めたくないから」
「そうですね」

凛にとっては嫌なことは忘れて新しい暮らしを模索する方が幸せかもしれない。
でも、私は相手の男を許さない。
どうしても我慢できない私は、凛が付き合っていた男に仕返ししてやろうと決心した。

詳しい事情までは知らないけれど、凛が職場の上司である営業課長と付き合っていたのを私は知っている。
もちろん、家庭のある人との恋愛が褒められたことでないのは私にも理解できる。
凛も恋愛感情と道徳心の間で苦しんでいた。だからこそ別れを切り出した。
それなのに・・・絶対に許せない。
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